肩が痛くて夜に眠れないあなたへ|原因と今日からできるやさしい対処法

夜、布団に入ってから
「また肩がズキズキしてきた…」
「寝返りで目が覚める…」

こんな夜が続くと、本当につらいですよね。
眠れないと、翌朝もだるいし、イライラするし、
「自分が弱いのかな」「がまんが足りないのかな」と、
自分を責めてしまう方もいます。

でも、それはあなたが弱いからではなく、痛みがつらすぎるだけです。
仕事や家事、子育てでクタクタな中、
それでも「なんとかしたい」と思ってこのページを開いてくれた時点で、
あなたはもう十分がんばっています。

このページでは、作業療法士として肩のリハビリに関わってきた立場から、

  • なぜ夜に肩が痛くなりやすいのか
  • 家でできる、やさしい対処法
  • 「このサインがあれば病院に相談した方がいい」目安

を、専門用語をできるだけ使わずにお伝えします。
全部読まなくても大丈夫です。
今のあなたに必要そうなところだけ、つまみ読みしてもらえたら嬉しいです。

この記事で分かること

  • 夜だけ肩が痛い理由(姿勢・血流・炎症・硬さ)をやさしく解説
  • 楽になる寝方:仰向け+腕下クッション/横向き+抱き枕の配置
  • 寝る前3分ケア:ペンデュラム/棘上筋セルフマッサージ(安全手順)
  • 冷やす?温める?急性・慢性の見分けと正しいやり方
  • 受診の目安(夜間覚醒2週間・しびれ・可動域低下・外傷後など)
  • 臨床のリアル:夜は鎮痛薬が効きにくいことがあり、腕の重みを抜く体位が有効
  • 参考文献:夜間痛と睡眠の研究・ガイドラインの出典一覧

1. なぜ「夜だけ」肩が痛くなるの?

1-1 夜は痛みに集中しやすい

日中は仕事・家事・育児で動いているため、痛みから意識がそれがち。
夜は静かで暗く、痛みを感じやすい環境になります。

「昼間はそこまで気にならないのに、寝ると急に痛くなる…」
これは、決して気のせいではなく、よくあるパターンです。

肩の病気を持つ人は、夜間痛と睡眠の質の低下が起こりやすいことが、いくつかの研究でも報告されています(参考①②)。


1-2 寝姿勢で肩に「体重」がかかる

横向きで寝ている人は、下側の肩が体重でつぶれやすいです。
すると、肩の中にある

  • 腱(すじ)
  • クッションの役割をする袋(滑液包)

などに負担がかかり、うずくような痛みが出やすくなります。


1-3 肩や肩甲骨まわりが「かたすぎる」

  • 長時間のデスクワーク
  • スマホを前かがみで見る
  • 運動不足

こういった生活が続くと、肩〜首〜肩甲骨が硬くなるため、
寝返りのちょっとした動きだけでも、ズキッと痛みが出やすくなります。

「自分の生活が悪いからだ」と責める必要はありません。
現代の生活スタイルだと、誰でもなりやすい状態です。


2. 今夜からできる「寝るときの工夫」

2-1 基本は「仰向け」+腕の下に小クッション

一番おすすめは、仰向け姿勢です。

  • 枕は、首のカーブが自然に保てる高さ
  • 肩は、できるだけマットレスに預ける

これだけでも、肩の負担はかなり変わります。

さらに、痛い側の腕の肘〜前腕の下に、薄いクッションやタオルを入れてみてください。

→ 腕の重さをクッションにあずけることで、
 肩の関節の中の圧迫が軽くなりやすいです。


2-2 横向き派でもラクに眠るコツ

「横向きじゃないと眠れない…」という方も多いですよね。
その場合は、次の3つをセットにしてみてください。

  • 痛い肩を上側にする
  • 抱き枕や丸めた布団を胸の前でぎゅっと抱える
  • 上側の腕の下にクッションを入れる

さらに、背中側に小さなクッションを挟むと、
体が安定して、肩への負担が減ります。

→ 肩にかかる重さを、抱き枕・クッション側に逃がすイメージです。


3. 寝る前3分の「やさしいケア」

ポイントは、「痛みをゼロにする運動」ではなく、
**「少しでも楽になる準備」**をしてあげるイメージです。

※痛みが強い日は、無理にやらなくて大丈夫。
 目安は「0〜3/10くらいの痛みまで」です。


3-1 ペンデュラム運動(ぶらぶら運動)

  1. 机やイスの背に、痛くない方の手を置く
  2. 少し前かがみになり、痛い側の腕は力を抜いてダランと下げる
  3. 腕を小さく前後・左右・円に各10回動かす

ポイント

  • 自分で「振ろう」とせず、腕の重さに任せてぶらぶら
  • 肩ではなく、腕全体が“ブランコ”になったイメージ

3-2 「首と肩のあいだ」をやさしくセルフマッサージ(棘上筋まわり)

  1. 反対の手の**指2本(人差し指+中指)**を使う
  2. 「首の付け根」と「肩の一番外側」の中間あたりを探す
     (少しへこんでいる・コリっとする所が目安)
  3. そこをギュッと押すのではなく、
     やさしく小さな円を描くようになでる(30秒〜1分)

ポイント

  • 「気持ちいい〜軽くほぐれる」くらいの強さ
  • 痛みやしびれが強くなるなら中止

3-3 クロスボディ(肩後ろストレッチ) ※前が痛い人はやらない

  1. 痛い側の腕を、胸の前で横にまっすぐ伸ばす
  2. 反対の手で、その肘を軽く抱える
  3. 肩の後ろがじんわり伸びるところで20秒キープ×2〜3回

ポイント

  • 「痛気持ちいいの手前」で止める
  • 息を止めず、ふーっと楽に呼吸

とても大事な注意点

  • このストレッチで肩の“前側”にツーンとした痛みが出る人は、
     絶対に無理して続けないでください。
  • 肩の前をさらに刺激して、かえって悪化することがあります。

4. 冷やす?温める?迷ったらコレ

4-1 冷やしたほうがいいケース

こんなときは**「冷やす」**が優先です。

  • 肩が熱っぽい・腫れている感じがある
  • ある日を境に急に痛みが強くなった
  • 動かすと鋭い痛みが走る

→ 保冷剤や氷まくらをタオルでくるんで、
 15〜20分を目安に、1日数回まで


4-2 温めたほうがいいケース

次のようなときは、**「温める」**ほうが向いていることが多いです。

  • 何週間も続く重だるい痛み
  • 朝、肩がこわばって動かしづらい
  • 肩・首が冷えるとつらくなる

→ 入浴で肩までしっかり温める/蒸しタオル/温湿布など。
 そのあとにやさしい運動を少しだけ入れると、より動きやすくなります。


5. それでも痛い夜は…「いったん起きる」もアリ

ここまでの工夫をしても、**「今夜はどうしても痛い…」**という夜は正直あります。
臨床の現場でも、

  • 痛み止めを飲んでいても、夜だけは痛みが残る
  • 五十肩や腱板のトラブルでは、夜間痛がいちばんしつこい

という話はよく聞きます。
研究でも、手術などで状態が良くなっても、夜の睡眠トラブルがしばらく残る人が一定数いると報告されています(参考②③)。

そんなとき、私が患者さんにお伝えしているのは、
**「がまんして寝続ける」より、「一度起きてリセット」**という方法です。

腕の重みを抜く、簡単なリセット方法

  • イスやベッドの端に腰かける
  • 痛い側の腕を、太ももの上やクッションの上にそっと預ける
     (もしくは少し前かがみになって、腕をぶらんと垂らす)

→ 肩の関節にかかっている**「腕の重さ」**を一度リセットするイメージ。

数分〜10分ほどこの姿勢で休むと、
「さっきよりマシかも」と話される方が多いです。

「我慢比べ」みたいに耐え続けなくて大丈夫です。
一回起きて、楽な姿勢でリセットしてからもう一度寝直す。
それも立派なセルフケアです。


6. こんなときは病院へ(目安)

次のような場合は、一度病院に相談した方が安全ゾーンです。

  • 夜の痛みで何度も目が覚める日が2週間以上続いている
  • 腕が肩の高さまで上がらない/ズボンをはく・背中に手が回らない
  • 肩だけでなく、腕や手にしびれがある
  • 肩が赤い・腫れている・熱っぽい
  • 転んだ・ぶつけた後から急に痛くなった

こうした場合には、

  • 腱板(筋肉のすじ)の断裂
  • 石灰沈着性腱炎(石灰がたまる病気)
  • 強い炎症を伴う肩関節周囲炎

などが潜んでいることもあります。

研究でも、こうした肩の病気では
**「夜の痛み」と「眠りの質の悪化」**がセットで起こりやすいことが報告されています(参考①〜③)。


7. 日中にできる「ちょっとした予防」

「とりあえず、今できることだけでも…」という方へ。
日常生活で、こんな小さな工夫を足してあげるだけでも、
長い目で見て、肩への負担は確実に変わってきます。

  • デスクワークは1時間に1回、肩を後ろにぐるぐる回す
  • スマホはできるだけ目の高さ
  • バッグは、いつも同じ側だけにかけない
  • 週2〜3回、今日紹介したケアのどれか1つだけでも寝る前にやってみる

「全部やらなきゃ」と思わなくて大丈夫です。
今の自分にできそうなものを1つだけ選んでみてください。


よくある質問(Q&A)

Q. 痛いときは、肩をなるべく動かさない方がいいですか?

A. 「動かすと激痛」のような状態なら、その日は休んでOKです。
 ただ、痛みが少し落ち着いてきたら、
 **“痛くない範囲で”“ゆっくり”**動かした方が、固まりにくくなります。


Q. 市販の湿布や塗り薬だけで様子を見ても大丈夫?

A. 一時的に楽になることは多いです。
 ただし、

  • 2週間以上使っても良くならない
  • だんだん痛みが強くなっている

といった場合は、湿布だけで我慢し続けず、
一度専門家に相談した方が安心です。


参考文献(やさしい注釈付き)

  1. Mulligan EP, Brunette M, Shirley Z, Khazzam M. Sleep quality and nocturnal pain in patients with shoulder disorders. J Shoulder Elbow Surg. 2015;24(9):1452–1457.
     → 肩の病気がある人は、夜間痛と睡眠の質の低下が起こりやすいことを示した研究。
  2. Austin L, Pepe M, Tucker B, et al. Sleep Disturbance Associated With Rotator Cuff Tear: Correction With Arthroscopic Rotator Cuff Repair. Am J Sports Med. 2015;43(6):1455–1459.
     → 腱板断裂では睡眠障害が生じやすいが、修復術後に改善するケースが多いという報告。
  3. Longo UG, et al. Arthroscopic Rotator Cuff Repair Improves Sleep Disturbance. Int J Environ Res Public Health. 2021;18(7):3797.
     → 手術で痛み・睡眠は概ね改善するが、夜間症状がしばらく残る人もいることを示した論文。
  4. Cho CH, Jung SW, Park JY, et al. Is shoulder pain for three months or longer correlated with depression, anxiety, and sleep disturbance? J Shoulder Elbow Surg. 2013;22(2):222–228.
     → 慢性的な肩の痛みと、睡眠障害・不安・うつとの関係を調べた研究。
  5. 武田大輝ほか. 肩関節疾患における夜間痛の関連因子—腱板断裂の有無に着目して. 臨床整形外科. 2019;54(10):1031–1035.
     → 腱板断裂と夜間痛の関連についての日本の報告。
  6. 廣瀬聰明ほか. 腱板断裂患者の夜間痛—アンケート調査ならびに肩峰下滑液包の圧測定—. 肩関節. 2003;27(2):259–262.
     → 肩の中の圧(肩峰下圧)と夜間痛の関係を調べた研究。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断や治療を行うものではありません。
 症状が続く場合や強い場合は、必ず医療機関にご相談ください。


さいごに 〜「つらい」の一言からで大丈夫です〜

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
ここまでスクロールしたということは、
それだけ夜の痛みや不安と、毎日向き合ってこられたのだと思います。

  • 「このくらいで病院に行くのは大げさかな」
  • 「忙しいし、まだがまんできるし…」

そうやって、自分のつらさを後回しにしてしまう人ほど、
まじめで、がんばり屋さんが多い印象です。

でも、夜に眠れない痛みは、心も体もじわじわ削ってしまいます。
この記事で紹介したセルフケアは、あくまで
「自分を少しでも楽にするための小さな道具箱」のようなものです。

  • 寝方を少し変えてみる
  • クッションを1つ足してみる
  • 寝る前に30秒だけぶらぶら運動をしてみる

そんな小さな一歩で、
「昨日よりちょっとだけマシだったかも」と感じられたら、それで十分です。

そしてもし、
「やっぱり不安だな」「そろそろ限界かも」と感じたときは、
どうか一人で抱え込まず、病院や専門職を頼ってください。

病院は「重症の人だけが行く場所」ではなく、
**“早めに相談して、こじらせないようにする場所”**でもあります。

このページが、
あなたが少しでもラクに眠れるようになるきっかけになれば、とても嬉しいです。